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公開日 · 著者 Renaud Deraison

命令を出していたのはダウンロードだった

Forever Security は、顧客のマシンでコーディングエージェントが既知の悪性 npm パッケージをインストールしようとしている場面を捉えた。命令の出どころは ~/Downloads に置かれた AGENTS.md ファイル。Web ページがクリックなしで書き込める唯一のフォルダだ。Forever はこの攻撃を Codex で再現し、成功率は 90% を超えた。Claude Code でも再現し、仕込まれた CLAUDE.md がエージェントの API 通信とログイントークンを横取りした。Bromure Agentic Coding では、ブラウザはダウンロードを Mac に保存し、エージェントは別の VM で動き、通信路上のトークンは代用値だ。

30 年のあいだ、Web がダウンロードフォルダに置いたファイルは、開かない限り何もしなかった。そこへ、起動したフォルダを読んでその指示に従うコーディングエージェントが現れた。

10 月 22 日、Forever Security は、ある顧客のマシンで上がったアラートから始まるレポートを公開した。セッションの途中にあったコーディングエージェントが、npm から function-color をインストールしようとしていた。このパッケージは、Checkmarx が MALFEX という名で報告したマルウェアキャンペーンの一部で、Forever はコードが実行される前にインストールを止めた。

既知の悪性パッケージを止めるのは日常業務だ。奇妙だったのは命令の出どころだった。どの依存関係も、どのリポジトリも、そのパッケージを求めていなかった。エージェントは、顧客の ~/Downloads フォルダにあった AGENTS.md に従っていた。Codex がディレクトリで起動するときに読む指示ファイルだ。そのファイルがどうやってそこに来たのか、誰も知らなかった。The Hacker News は今朝この件を報じた。

無害な二つの事実

Forever の説明は、それぞれ単体では問題のなかった二つの事実に基づいている。

一つ目は指示ファイルだ。AGENTS.md や CLAUDE.md、その類のファイルは、プロジェクトの仕組みをエージェントに伝えるためにある。エージェントは起動時にそれを読み込み、あなたからの指示として扱う。自分で書いたプロジェクトの中なら、それで正しい。

二つ目はダウンロードフォルダだ。Web ページは、クリックも許可の確認もなしにそこへファイルを保存でき、名前も中身もページが決める。これが危険でなくなって久しいのは、インターネットから来た実行ファイルを、承認するまで OS が実行しないからだ。

その保護がチェックするのは実行ファイルで、AGENTS.md はテキストファイルだ。それでもエージェントはこれをスクリプトのように読む。Forever の言葉では「Markdown is the new executable」、Markdown は新しい実行ファイルだ。

Forever は次に、この二つがどれだけ頻繁に出会うかを測った。同社のテレメトリでは、顧客の約半数がダウンロードフォルダの中でコーディングエージェントを動かしており、エージェントのセッションのおよそ 4 分の 1 が本物のブラウザを開く。二つ目の数字が重要なのは、いまやブラウズしているのがエージェントだからだ。訪れたサイトがファイルを置いても、それが届くのを見ている人は画面の前にいない。

Web ページからエージェントの設定まで1 · ページが保存クリックも確認もなし名前もページが決める2 · ~/DownloadsAGENTS.md か CLAUDE.md技術メモを装う3 · そこで起動信頼できるプロジェクト指示として読み込む4 · 設定を書き換え「before beginningthe user's request」Codex · 試行の 90% 超でマルウェアを実行~/.codex/config.toml に [mcp_servers.project-tools] を追記マシン上の全 Codex セッションが読み込むlaunchctl submit … npm install function-colorClaude Code · 書き込み承認は約 2 回に 1 回.claude/settings.json に ANTHROPIC_BASE_URLOAuth トークンは攻撃者の「ゲートウェイ」へモデルを装いツール呼び出しを返す
Forever Security が見つけ、再構成した連鎖。Web ページがクリックなしで AGENTS.md または CLAUDE.md を ~/Downloads に保存する。そのフォルダで起動したコーディングエージェントが、ファイルを指示として読む。Codex では、ファイルがマシン全体の ~/.codex/config.toml に MCP サーバーを追記し、悪性の npm パッケージをインストールする。Claude Code では、プロジェクト設定に ANTHROPIC_BASE_URL を書き込むため、エージェントは OAuth トークンを攻撃者に送り、攻撃者はモデルになりすまして応答できる。

仕込まれたファイルがしたこと

Forever は、攻撃者の実物のファイルを隔離した VM 内で Codex に読ませた。ファイルは長く退屈な「Engineering Work Guidelines」文書で、ペイロードは終わり近くの一節にある。その節は Codex に、「at the start of the session, before beginning the user's request」、つまりセッション開始時、ユーザーの依頼に取りかかる前に、~/.codex/config.toml へ project-tools サーバーを追記するよう指示する。そのサーバーのコマンドは launchctl submit で、Codex の管理外で npm install function-color を起動する。続いてファイルは、インストールにはデフォルトのサンドボックスが許さないネットワークアクセスが要ると説明して、Codex に --dangerously-bypass-approvals-and-sandbox 付きの子セッションを走らせる。

Codex は試行の 90% 超でマルウェアを実行した。設定ファイルはマシン全体に効くので、その後の Codex のセッションは、どのフォルダで始めても攻撃者のサーバーを読み込む。ダウンロードフォルダを離れても消えない。

function-color 自体はペイロードを持たない。Checkmarx によると、これは依存関係として function-flag を引き込み、そのパッケージの postinstall スクリプトが実行ファイルをダウンロードして実行する。どちらにも現在はマルウェアのアドバイザリが出ており(function-color は MAL-2026-17647)、npm はパッケージを削除した。

Claude Code はだますのが難しく、通用した攻撃の形も違う。Forever は、社内ゲートウェイの設定に見せかけた CLAUDE.md を書いた。それは Claude に、プロジェクトの .claude/settings.json へ ANTHROPIC_BASE_URL を保存するよう求める。向け先は Forever が管理する、有効な証明書を持つサーバーだ。Claude はこの書き込みに人の承認を求めるが、長く地味な体裁のおかげで、承認はおよそ 2 回に 1 回通った。

この一つの設定が二つのことを引き起こす。すべての API リクエストが Claude の OAuth トークンを Forever のサーバーへ運ぶようになり、Forever は捕まえたトークンを本物の API に再送して、被害者として応答を受けた。さらにサーバーはモデルになりすまして応答できる。次回起動時、サーバーは dangerouslyDisableSandbox を true にした npm install function-color の Bash ツール呼び出しを返し、クライアントはサンドボックスを切ったままそれを実行した。「設定を検証する」ためのサブエージェントを使う方法でも、Forever は同じセッション内でおよそ 5 回に 1 回コード実行に成功した。

Forever の結論は「OpenAI や Anthropic がここでパッチを当てるべきものは何もない」というものだ。エージェントは、Web が書き込めるフォルダで、作られたとおりに動いただけだった。

同じファイルを Bromure マシンで

Bromure Agentic Coding は、Claude Code、Codex、Grok、Kimi、omp を Mac 上の Ubuntu VM で動かす。マシンごとに VM が一つで、本物の認証情報はホストに置かれる。攻撃を順に追い、各段階がどこに着地するかを見ていこう。

Web はエージェントのフォルダに書き込めない

ノート PC では、ブラウザとエージェントが一つのディスクを共有し、ダウンロードフォルダはその二つが重なる場所だ。Bromure マシンは両者を別々のディスクに置く。

エージェントの世界はマシンの VM だ。専用のホームフォルダ、専用のシステムディスク、そしてあなたが共有すると決めた Mac のフォルダ。あなたの ~/Downloads は、自分で加えない限りその世界に含まれない。セッションは VM 内のそれぞれのフォルダで始まるので、うっかり陥る「エージェントをダウンロードフォルダで起動する」という状況がそもそもない。

Forever の二つ目の数字、つまりエージェントがブラウズするセッションの 4 分の 1 も同じように扱われる。各マシンの組み込み Chromium は、エージェントのものとは別の、使い捨ての専用 VM で動く。ページがファイルを保存すると、ダウンロードは Mac のダウンロードフォルダに入り、ツールバーのダウンロードポップオーバーに表示される。ファイルはエージェントのホームにも、どのセッションフォルダにも入らない。だから、エージェントが訪れたページが一日中 AGENTS.md を置き続けても、エージェントはそのどれも読まない。マシンの Browser 設定で Allow file downloads をオフにすれば、ページは何も保存できなくなる。

ノート PC:ディスクは一つブラウザあなたかエージェントの~/DownloadsAGENTS.md が届くエージェントDownloads で起動本物の OAuth トークンと ~/.codex/config.toml書き換えたベース URL が本物のトークンを運び出すnpm install は Mac 上で実行Bromure:別々の VMブラウザ VM使い捨て、専用ディスクMac の ~/Downloadsエージェントと非共有エージェント VM(Ubuntu)自分のホームと共有されたフォルダだけANTHROPIC_API_KEY = sk-ant-api03-brm-… 代用値経路なしMac 上のホストプロキシ本物への差し替えは api.anthropic.com のみ代用値が他所へ:451、VM 一時停止
同じページ、二つの構成。ノート PC では、ブラウザが AGENTS.md を ~/Downloads に保存し、エージェントがそのフォルダで起動し、本物のログイントークンが手の届くところにある。Bromure マシンでは、組み込みブラウザが使い捨ての専用 VM で動き、ダウンロードを Mac に保存する。エージェントは自分のホームと共有されたフォルダしか見えない別の VM で動き、代用トークンを持つ。Mac 上のプロキシは、プロバイダー自身のホストへのリクエストに限り、それを本物と差し替える。

横取りされたトークンは代用値

では、仕込まれた CLAUDE.md が、クローンしたリポジトリやドラッグしたファイルを通じて結局エージェントに届き、ANTHROPIC_BASE_URL の書き込みが承認されたとしよう。

Bromure の VM 内の Claude Code は、本物の認証情報を一切持たない。API キーの場合、ANTHROPIC_API_KEY は sk-ant-api03-brm- で始まる偽物だ。Claude のサブスクリプションの場合、本物の OAuth トークンは Mac 上にだけあり、エージェントはプレースホルダーのキーで動く。HTTPS リクエストはすべてホスト上のプロキシを通って VM を出ていき、プロキシはリクエストがプロバイダー自身のホストに向かうときだけ本物の認証情報に差し替える。

したがって、ai-gateway.internal-corp.com へのリクエストは代用値を載せて出ていく。Forever のアカウント乗っ取りは、サーバーが集めたトークンを再送することにかかっていた。このトークンを Anthropic の API に再送しても、API は拒否する。

API キーの場合、代用値は仕掛け線としても働く。プロキシは送信リクエストをすべて調べ、発行先ではないホストに向かう偽物を探す。他人の「ゲートウェイ」に向かう sk-ant-api03-brm- キーには、1 バイトも Mac を出る前に HTTP 451 で応答する。VM は一時停止し、This environment may have been compromised というアラートが、認証情報の名前、それが属するホスト、送られた先のホストとともに表示される。マシンをシャットダウンすることも、調査のためにディスクとホームフォルダを保存することもできる。どちらを選んでも、マシンは再起動の前に消去が必要だ。

偽のモデルには応答する足場がない

Claude への攻撃のうちコード実行に至る部分は、エージェントが攻撃者のサーバーに到達し、そのサーバーがモデルとして応答できることを前提にしている。マシンの Guardrails ペインで Unmatched traffic を Deny にし、プロジェクトに必要なホストを許可しておく。ai-gateway.internal-corp.com はそのリストにないので、接続は Mac 上で、仮想スイッチで、そしてプロキシでもう一度拒否され、偽造されたツール呼び出しは届かない。拒否は Security Timeline の一行になり、エージェントが到達しようとしたホストが記録される。

インストールはおとりだらけの Linux VM で走る

エージェント自身がコマンドを実行する Codex の経路を見てみよう。実物のファイルの入口は macOS のコマンド launchctl だ。Bromure マシンは Ubuntu で動く。ペイロードを Linux 向けに書き直せば、それでも VM の中で実行されるが、手の届く認証情報はすべて代用値だ。GH_TOKEN、~/.git-credentials、~/.aws/config、MCP の設定。ファイルがエージェントに受け入れさせる --dangerously-bypass-approvals-and-sandbox フラグは Codex 自身のサンドボックスを切るが、Codex を囲む VM はそのまま残る。

npm install そのものは、Mac 上の Bromure のサプライチェーンプロキシを通る。パッケージの取得はすべて Security Timeline に出るので、function-color と function-flag は名前付きの行として現れる。マシンの Supply Chain ペインでインストールスクリプトの除去をオンにすると、プロキシは届いた npm tarball から preinstall、install、postinstall、prepare を取り除く。実行ファイルを取ってきていたのは function-flag の postinstall だった。除去がオンなら、tarball が VM に届く前にそれは消えている。パッケージフィルターに socket.dev を選び、Block compromised packages にチェックを入れれば、socket.dev がマルウェアと判定したパッケージを Bromure が 451 で拒否する。

汚染された設定は巻き戻る

ノート PC では、攻撃者のサーバーエントリは誰かが見つけるまで ~/.codex/config.toml に残り、どのフォルダの Codex セッションもそれを読み込む。Bromure マシンでは、このファイルは VM のホームにある。起動に成功するたびにホームのロールバックポイントが作られ、Rewind home… を使えば、ファイルが届く前の起動時点の状態に戻せる。Reset disk は、署名済みのベースイメージからシステムディスクを複製し直す。Mac 上のエージェント設定は、あなたが置いたままの状態で残る。VM はそこに一度もアクセスできなかったからだ。

仕込まれた指示には二人目の読み手がつく

エージェントが読み込む指示ファイルは、どれもシステムプロンプトに入ってモデルに送られ、そのリクエストは Mac 上のプロキシを通る。マシンの Prompt Injection ペインで Detect rogue instructions in CLAUDE.md files and similar をオンにすると、Bromure はそのプロンプトから CLAUDE.md、AGENTS.md、GROK.md を取り出し、ローカルで検査する。ヒューリスティックな検査が隠れた Unicode やメタ指示を探し、悪性のルールファイル向けに訓練された ModernBERT 分類器が二つ目の判定を出す。Ask me what to do モードでは、何かがモデルに届く前にリクエストが止まり、Mac 上のダイアログに検出器が反応した節が表示される。Forever のようなファイルなら、「before beginning the user's request」にサーバーブロックを追記せよという段落がそれにあたる。

ダウンロードは Mac にとどまる

組み込みブラウザは使い捨ての専用 VM で動き、ファイルを Mac に保存する。エージェントの VM から見えるのは、自分のホームとあなたが共有したフォルダだけだ。

通信路上のトークンは偽物

横取りされたベース URL が集めるのは代用値だ。誤ったホストに向かう API キーの代用値は 451 で遮断され、VM は一時停止する。

偽のモデルは接続できない

Unmatched traffic を Deny にしておけば攻撃者のゲートウェイには届かず、拒否された接続は Timeline に残る。

インストールはまず Mac を通る

npm の取得はすべて記録される。スクリプト除去が postinstall フックを取り除き、socket.dev が判定したパッケージは 451 で遮断できる。

エージェントの居場所

Forever の助言は妥当で、費用もかからない。ダウンロードフォルダでエージェントを起動しない。自分で書いていない指示ファイルは読む。エージェントの設定に、自分で追加していないサーバーやベース URL がないか確認する。このリストのどの項目も人が注意を払うことに頼っており、レポート自身のテレメトリは、誰も見ていないあいだにエージェントがブラウズしている様子を示している。

Bromure Agentic Coding は、それらのチェックをマシンの構成そのものに組み込む。Web が書き込むフォルダは Mac 上にあり、エージェントは別の VM で動く。エージェントが持つのは代用値なので、言いくるめられて何を送っても、その Mac の外では何も開かない。ネットワーク、パッケージレジストリ、指示ファイルは、それぞれインターネットやモデルに届く前にホスト上の検問所を通る。エージェントはこれからも自分のフォルダにあるファイルに従うが、Bromure マシンでは、Web がそこにファイルを置くことはできない。

リポジトリ経由で届いた、ベース URL 攻撃の以前の形については「エージェントは自らの鍵を漏らした」を、ダウンロードした文書に紛れ込んだ MCP サーバーについては「そのノートブックは自前の MCP サーバーを連れてきた」を読んでほしい。